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調査研究の部屋

生きる場の今と未来を問うことから

自立(自己実現)と共生(空気)の狭間で

レポート版ヤングケアラー異聞(2)

ヤングケアラー(子ども)へのケアラー(大人)の
要請
に応える政治と行政が陥る 
“施策に潜む善意の罠”
★公明新聞記事(22年4月25日3面)★
◆「 ヤングケアラー NEWSここがポイント 」から得た示唆と危惧◆


1.問題化への歩み 
 

1)報道記事では
   【#「ヤングケアラー」をNHK政治マガジン記事で深掘り】より 
 ➀2022年4月27日:自民・公明・国民の3党で
            「ヤングケアラー」検討チーム設置 

 ➁2022年4月7日:ヤングケアラー”小学生15人に1人「家族の世話」国が初調査 

 ③2021年5月17日:ヤングケアラー 早期把握し 支援へ体制強化 国が報告書
 ④2021年4月12日:ヤングケアラー」中学生の約17人に1人 初の調査
 ⑤2021年3月17日「ヤングケアラー」5月までに支援策 国のPT

2)公的な調査報告書では
 ◆厚生労働省による2020(令和2)年度と2021(令和3)年度の
  「子ども・子育て支援推進調査研究事業」による委託事業として
  実施された
調査研究と報告書 
 ★2020(令和2)年度は三菱UFJ リサーチ&コンサルティング受託実施  
 ⑥
2021年3月「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書」
 ★2021(令和3)年度は日本総合研究所が受託実施
 ⑦2022年04月11日「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」(概要)  
 ⑧2022年3月「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書」
 

2.
問題解決への歩みは
1)2022年度 
厚生労働省による支援体制事業
 ⑨2022年度ヤングケアラー支援体制強化事業の概要
  (ヤングケアラー実態調査・研修推進事業)
  令和4年度予算:212億円の内数(児童虐待・DV対策等総合支援事業) 
 ⑩2022 3月31日ヤングケアラー支援体制強化事業の実施について
   都道府県知事、市町村長、特別区長へ 厚生労働省子ども家庭局長より
                           子発0331第18号
2)2022年度 厚生労働省・文部科学省による推進施策
 ⑪2021年9月14日 ヤングケアラーの支援に関する
        令和4年度概算要求等について 厚生労働省 文部科学省
 ⑫2021年5月17日ヤングケアラーの支援に向けた
     福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム報告
(概要2頁)
  【厚生労働省・文部科学省の副大臣を共同議長とするヤングケアラーの
   支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチームとりまとめ】
 ⑬2021年5月17日ヤングケアラーの支援に向けた
    福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム報告(全体13頁)

3)文部科学省による推進サイトと施策
 ⑭◆2021文部科学省:ヤングケアラーの支援に向けた
      福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチームについて

 2021ヤングケアラーの実態に関する調査研究のポイント①②
  (2021年3月「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」三菱UFJリサーチ&コンサルティング
4)厚生労働省によるサイト 
 ヤングケアラーについて (mhlw.go.jp)
 
  厚労省によるヤングケアラーの簡明な位置づけと省庁横断的相談窓口案内、
   関連する情報検索サイト、当事者・元当事者の交流会・家族会、関係団体サイト
   調査研究事業、支援体制強化事業、関連リンク一覧

 子どもが子どもでいられる街に。~ヤングケアラーを支える社会を目指して~ 
 
  ヤングケアラーのとらえ方、現実の状況、あるべき姿、それ故の課題
   これらが丁寧にわかりやすく表現されたサイトです・・が・・・
      本サイト名末尾の“施策に潜む罠”とは◆

3.”施策に潜む罠”の解除の鍵を求めて
1)ヤングケアラーに関する思考(その1)2022年4月26日

(1)“ヤングケアラー(子ども)”へのケアラー(大人)の要請(切実)に応える
  政治と行政の善意が陥る“施策に潜む罠”
 ・善意と優しさが生む意図せざる差別の温床に
 ・当初は働く親に代わって介護に携わる高校生の問題であったはずだが
 ・そこに中学生が入る現実への同情に近い理不尽さへ訴えに射程が広がり
 ・母親が介護や看護の要介護者になることで問題の解き口が複雑になる 

(2)家族内の看護や介護に関わることが可能な家族以外の他人を供給できる
  社会の仕組みは、介護保険制度しかないという現実にたじろぐ
行政担当者、
  無知を装う研究者・・・政治家は?・・・

 ・障がい者に対処する福祉のシステムは存在するが、
  多数派のリアル(社会の慣習と常識)は
家族内での対処(問題解決)を求め、
  要介護・看護者と介護・看護者(母親)以外の家族は
  忍耐と自立を強制される。

 ・幼い兄弟姉妹の世話(生活補助としつけ)がケアの対象に繰り込まれ、
  小学生調査では兄弟姉妹の日常生活のサポートがヤングケアラーに分類され
  その先の説明文と支援事業の予算項目に児童虐待の文字があてられる。

(3)ここまで広がると、ヤングケアラーという言葉、概念に内包される意味は、
  母親の就労批判と一人親を不幸の原因とみなすかつての常識の復活につながる。

 ・事実、調査結果の報告書には、共働きと一人親がヤングケアラー誕生の
  社会的要因の欄に書き込まれる
 ・大人が担うべきことを子どもに、とのヤングケアラーの説明に
  透けて見えるのは、大人という枠の真中に母親の無責任批判が存在しないか

 ・少なくとも、公的調査に一人親や共稼ぎを子どもの問題の社会的背景として
  列記することの問題性への無自覚さに危惧(無知の暴力、善意の差別)を

(4)学校生活に適合できないことを不可とする視点が復活する
 ・不登校の問題視に潜在する学校の拘束批判で得た学校教育の相対化の契機の喪失
  ★他の手段によるケアを提供する法制度の保障なく、
   当事者(ヤングケアラー)の心のケアを言葉で行う作業は、
   介護や看護や世話の行為を被害と加害の関係に置き換える
 ・可哀想の感情(目線)自尊と貢献の行為を被害者のラベリングに変質させ、
  当事者の誇りを砕くことに。
 ・いじめや虐待とは異なり、家族のケアは社会的賞賛の対象であったはずだが、
  ケアに費やす時間を勉強の妨げや学校生活への不適合の原因とみなされて、
  可哀そうから不幸な子へと善意の同情が深化する先に、差別の感情の温床が・・ 

(5)介護保険と同様に、家族内ケアを社会の役割とおき、介護保険システムの
  拡大に結ぶので選択肢が見えてくるが

 ・問題が明確になればなるほど、新たな法と財を伴う社会システムの展開に
  結びつけることなく、既存の仕組み入れ込むことで、
  その仕組み本来の機能の不全をもたらす
 ・社会保障、福祉、教育、学校、病院に責任を割る先に見えてくるのは・・・・
     “こども庁”から“こどもに家庭庁”への変化は、
        家族内に母親の役割を閉じ込める

2)ヤングケアラーに関する思考✍️(その2)2022年4月28日

(1)子どもが担う介護、看護、家事、子育ての役割を代替するための必要十分条件
  ➀ヒト、モノ、カネを供給する法制度(必要条件) 
  ➁それを求める世論、負担を引き受ける合意(十分条件)
  ③これらを喚起・調達することを組み込んだ
       家族サポートシステムの構築(必要十分条件)
 ・この4種を実現するための政策と施策の転換(Transformation)を求め構想の
  必要性の自覚(志し)がなければ、ヤングケアラー支援施策においても、児童
  虐待、DV、ストーカー、地域包括支援システムと同じ未来が待っていないか。
 ★より心配なのは、負担をかけられる既存制度の機能を阻害すること
 ・小中高の教師にヤングケアラーとみなされる児童生徒のサポートを、との要請が
  あるが・・・
家庭訪問もできない公立小学校の現実
 ・中学受験で旧来の小学校教育とは異なる教育力を求められ・・・
  
 ・教科担任制で学力重視と選抜制度の強化と学力格差批判に応じる中学教員の現実
 ・広域学区から通学する高校生の家庭の事情への責任を高校教員が担うことは困難
 ・school social workerに家庭の問題を解決する権限、能力、報酬は組み込まれず
 ・児童相談所に新たな仕事をする余裕はないはず
 ・もし家庭に入るなら家族内ケアを虐待とみなすことになる
 ・中学生は家族と親の問題を虐待とみなすことになる
 ・代替システムなくサポートをすればするほど、子どもを追い詰めることになる
 ・兄弟姉妹の多さが問題になった戦後の家族計画(堕胎推奨)とつながる
 ・母親と女性の就労、離婚、ひとり親への意図せざる哀れみ、忌避、蔑み・・・
 ・母となることへの不安、恐れ、忌避➡結婚への動機付け、あこがれの喪失
 ・兄弟姉妹への負担を強いる障がいを持つ子どもの家族への圧力
  モデル家族から外れる家族構成、就労環境、生活様式を
  不正常(アブノーマル)な家庭のみなす家族観、子ども観、保護者観の
  醸成につながらないか
 ・子どもたちの心の闇と共振する差別(いじめ)の土壌にならないか・・・ 

(2)希望がないわけではない
      ➡子どもを公的財とみなす社会への転換の契機との意味付け
 ★もう一つの介護・看護システムとしての家族内ケアの産業化
 ★子どもの存在の社会化・・・家の子➡国の子➡社会の子
 ★公的支援を保護者ではなく子どもひとり一人に等しく行使する
 ★少なくとも、さまざまな社会的サポートに携わるグループ、NPO、社会団体など
  への公的財の投入と社会的称賛の契機となっていることは認めたいが・・・
 ◆「2問題解決への歩みは」の「1)2022年度 厚生労働省による支援体制事業」に
  紹介した2022年度の下記⑨は児童虐待・DV対策等総合支援事業」である
  ことに違和感を禁じ得ない。
ヤングケアラーを児童虐待とみなすなら、当該者
  との相談事ではなく、公的施設に保護し、介護、看護、世話をする人の手配こそ
  急務のはずだが・・・。
  ⑨2022年度ヤングケアラー支援体制強化事業の概要
  (ヤングケアラー実態調査・研修推進事業)
   令和4年度予算:212億円の内数児童虐待・DV対策等総合支援事業

4.特報:ヤングケアラー支援マニュアルとは

 ◆多機関・多職種連携によるヤングケアラー支援マニュアル 
   ~ケアを担う子どもを地域で支えるために~

2022年5月1日

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