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調査研究の部屋

生きる場の今と未来を問うことから

教育システムという視点から

学校教育デジタル化のリアルのために(その1)

 学校教育デジタル化のリアルのために(その1)

1.デジタル化のスイッチが入った(とされる)現在の小学校の現実

秋田市立金足小学校の渡部和則先生より届いた充電器保管庫と一人1台PC(端末)の写真
 秋田渡邊先生教室内PC保存箱 IMG_1177


※上記写真も含めて、下記本文にストックA~Eとして、★印とストック単位の連番をつけた資料(写真、記事、報告書、馬居メモetc)は、現在作成中のUER-Laboの新サイト「学校教育のデジタル化のリアルのために」(仮称)にストックしてあります。
★を付した資料等はワンクリックして顕れるストック先のURLをクリックするとして開いてください

1)学力日本一とされる秋田では 

・上記写真は、キャプションに示すように、秋田市立金足西小学校の渡部和則先生が担任する学級の教室内に設置された充電器保管庫と一人1台タブレット型PC(端末)です。
・保管庫とPCの写真が添付された渡部先生のメールの本文には、次のように記されていました。
 「秋田市では4月時の児童数に合わせて各教室に設置済みです。PCの利用は5月以降のようです。設定は教員が3月、4月に行います。既に始めている学校の教員から作業の大変さが伝わってきます。」
・秋田県内の公立小中学校では、一人1台のPCが教室に届いているようですが、そのPCを使用するのは、4月以降の新しい学年の担任と学級の子どもたちになるようです。その新学期が始まるまでに、子どもたちに配布されるPCにソフトをインストールするは、今年度の先生方の役割ということのようです。その結果、子どもたちの新学期は、PCを活用する技術を学ぶことから始まると考えられます。「タブレットの利用は5月以降」と渡部先生が記された理由でしょうか。
・しかし、わずか一か月で、1年生から6年生まで全ての子どもたちが操作できるようになるのでしょうか。それとも、学力全国一の秋田ですので、学年や個人差を考慮した育成方法もPC設定と同時並行で準備されているのでしょうか。
・改めて、これからの課題は、との電話での問い(聞き取り調査)に、渡部先生は次のように語ってくれました。
 「機器の購入とWi-Fi施設の設置は、秋田市の施設課の仕事なので、教員は全くかかわっていません。でも、そのあとの学校教育のデジタル化とマスコミが報道する作業は、全て教員の責任です。そのスタートは、子どもではなく、教員一人ひとりのPC操作技術の習得と機器活用授業力を高める研修です。それでも、この研修は教員のことなので、やるべきことはイメージできるし、すぐに準備して作業を始められます。しかし、4月から担任する学年の子どもひとり一人に合わせて操作方法と授業での活用を教える方法が見えません。何よりも、PC操作のための学習時間をどの教科の,年間計画のどこに入れるかで、職員間での話し合いが必要ですが・・・・・。最も難しいのは、教科別にPC活用授業の内容、方法、授業時数などを教員が互いに了解できるようにすることです。学校全体と学年単位の教育課程や教科単位での単元構想や授業構成のレベルでの相互理解です。保護者の理解と協力を得るためにも、本校の教員間に共通理解をつくる必要があるからです。」
・電話から伝わる渡部先生の声の重さから、告示(2017年3月)とともに始まった学習指導要領移行期の労苦(大変さ・その1)。それが指導要領全面実施の年(2020年4月)を挟んで全国一斉に強行されたコロナ休校時の学習指導とその後の新しい学校生活や履修時数補習授業過密化としての大変さ(その2)に拡大再生産される。さらにその年度の終わりとともに始まる一人1台PC(端末)導入に伴う教員研修と新たな授業づくりの要請によって、より広く深い大変さ(その3)として再々再現されるのでは、との思い(危惧)がよぎりました。
・ただし、渡部先生は学力日本一とされる秋田県の小学校の先生です。他の自治体の公立学校ではどうでしょうか。

2)全国の公立小中学校では

・少なくとも、児童・生徒一人1台のPC(端末)を収める充電器保管庫の設置と大容量のWi-Fi施設整備に関しては、日本全国の公立小中学校と教室においても、秋田市と同様の作業が進行しています。
・ただし、保管庫にPCが入っているかどうかは、自治体によって異なるようです。
・東京都を代表に、大都市では、秋田より早く機器が配布され、PC活用の授業実践に挑む学校と教師は少なくないようです。
・他方で、発注が遅れて4月にずれ込む自治体や予算の都合で2021年度の配布対象を4年生以上とする自治体もあります。
・そこで、秋田のように日本一の評価には無縁で、東京都のように先進的でもない、静岡県の小学校の状況を紹介します。
・静岡の小学校の現状の情報源は、富士宮市立東小学校校長の米津英郎先生です。
※米津先生は2004~6年度に静岡県教育委員会大学院派遣教員として私の研究室で修士論文を書いて、専修免許を取得されました。学校に戻ってからも、馬居ゼミ卒業生として、人口減少先進県秋田の渡部先生を誘い、私が主宰する社会科・生活科・総合の実践研究のリーダー役を担ってくれました。そして、市教委指導主事3年を経て、昨年4月、富士宮市立東小学校の校長に就任されました。

3)静岡ではどうでしょうか

 ・秋田の渡部先生から得た情報とともに、「富士宮市と東小学校のPC導入の進捗状況と新任の校長として準備していることを教えてほしい」、との要望をメールに記して送ったところ、米津先生から「校長として行うべきこと」との名を付したノートのコピーが届きました。そのなかで、1人1台PC 導入に向けての進捗状況と連絡事項」と題して記述された項目から、学校現場の状況を知る手掛かりの資料と思われる記述(これも私見ですが)を抜き出して紹介します。
◆まず「 研修の進捗状況」の冒頭には、下記の二つの子ども像が、「GIGA スクール構想において目指す子供の姿」として描かれています。
①それぞれの課題に対し、ICT 機器をはじめとする必要な道具や方法を自ら選んで活用し、周りと協働しながら問題解決に向かって取り組むことができる子。
➁ICT 機器を使うことが目的ではなく、PC を一つの道具として使いこなせるようにする。今後の学習の道具・手段の一つとすることができるようになる。
◆さらに、「目指す子供の姿実現のために研修で進めていきたいこと」を3点示し、そのための研修課題が注記されます。
(1)研修で進めていきたいこと
 ①タイピング ➡モジュール等を使って少しずつ練習する。
 ②グーグルクラスルーム➡ 課題の配付・回収(ドキュメント、フォーム、ジャンボード
  ※まずは教師が使えるようにする。
 ③グーグルドライブ ➡学習情報を管理できるようにしていく。
(2)研修課題
ⅰ)上記②③はにコア研修で学んでいるため、本校教員への伝達研修で情報共有をしていく。
ⅱ)教員研修を進めるため早急に教師アカウントの取得を教育委員会に要請する。
  (教師は児童生徒より先にアカウントは取得し、操作力と指導力を向上させる)
ⅲ)アカウント配付後、準備不足の教員を中心に、校内研修体制を再構築する。
※コア研修(教育委員会が主催する各学校代表教員対象の研修:馬居注記)
◆次に「PCの導入状況」について、3種に分けて記されています。
 ①本校への配布は3月中旬になるため、今年度の学年と学級で子どもに使わせることができないが、アカウントを先行して配付するため、パソコン室PC で使うことは可能。
 ➁卒業生、退職者でパソコンを使わない場合でも、アカウントを配付する。6年生はそのまま中学校で使用する。使わないアカウントは自動的に削除される。
 ③体育館のWi-Fi は、規模の大きい中学校から工事を始めるとのこと。3月中に、約半数の学校に体育館Wi-Fi が導入される。(本校の工事は連絡待ち)
◆新学期開始で最も必要な「 児童生徒、保護者用PC 使用マニュアルの作成について」についても、2点記されています。
 ①現在、業者とICT 活用推進委員会で作成している。
 ➁校内研修での活用をお願いし、本校の実情に合わせて、改訂版を作成する。
◆授業開始とともに判断が求められる「 持ち帰りについて」は具体例とともに4点明記されています。
 ①家庭でのパソコンでもログインできるため、すべての子が持ち帰ることは想定しない。
 ➁持ち帰る際には、持ち帰り用のカバー等があったほうが良い(家で準備いただくか、学生協で購入可能)落下等が心配なので、ケースで持ち帰ることは避けたい(鞄にしまう)
③家庭での電源ケーブルの準備(アンドロイドスマホやゲーム機などで使われているものと同じ。100 円ショップ等でも購入可能)
④4月に指導を行った上で、5月の連休で持ち帰りを始められるようにしたい。
・米津校長の私的なノートのコピーからの抜き書きですが、大都市から離れた中規模自治体(人口13万人)の中心に位置する東小学校(児童数557名)のデジタル化への準備状況から、調査票作成の基礎となる地方の公立小学校の現状と課題を知る手掛かりにしていただけることを願って、米津先生の許可を得て紹介しました。
・秋田も含めて、本メールで紹介した事象について、より詳細な情報が必要になりましたら、馬居に連絡ください。できるだけ要望に応えられるように、渡部先生と米津先生にお願いしますので。
・ここでは、渡部先生と米津先生からの情報を踏まえて、私なりに考える課題を整理してたうえで、より広く、日経新聞と朝日新聞のデジタル版に掲載された学校教育デジタル化関連記事とその収集作業過程で記した私見メモを5種に整理して、提示させてただきます。いずれも、UER-Laboにストックした名称(URL付記)のみの紹介です。

4)課題は?

・米津校長のノートにあるように、ハード面での準備の進行とともに(見えやすい)、PC活用の仕方(見えにくい)が、管理職と教育委員会の検討課題になってきているようですが・・・
・渡部先生が語ってくれたように、個々の教員のレベルでの準備は、これからという状況認識にならざるを得ないでしょう。
・特に、日常の授業づくりにおける活用となると、ハードルは非常に高いと言わざるをえません。
・同時に、全ての教員が授業で使用するというレベルに達することを信じる教員はいないのでは・・・というのが実感です。
・そのことを示唆する最近の記事(掲載日と見出し)をストックA(1~10)として列記します。開いてみてください。
ストックA:デジタル化への学校と教師の現実
A-3★21年2月7日(金)日経:滞る遠隔授業、対面頼み:大阪・横浜、端末配布5割以下
A-4★21年2月7日(金)日経:サイバー防衛戦略、夏にも政府改定:教育や医療、対策強化
A-5★21年2月20日(土)朝日夕:自宅オンライン学習、特例の授業と認める  [非常時」文科省通知
A-6
★21年2月23日(火)日経:公教育の質 確保に不安:日本経済新聞
・上述しましたように、クリックするとUER-Laboにストックした記事のPDF版を開くURLが出てきますので活用ください。
・記事見出しに示すように、全国の公立小中学校を視野に置いたデジタル化の準備状況と課題が読み取れる記事です。
・同時に、いずれも、昨年春のコロナ休校時にマスコミが用いたオンライン格差を解消するためにデジタル化が必要、
 との視点からの記事ですが・・・
・国が異なると、また日本の大学教育でも、オンラインでの学習の問題点がみえてきます。
・現在、オンライン授業が実施されているのはB-1に記された米国だけではありません。ヨーロッパ各国、そして隣国の韓国と中国も、各家庭でのオンライン学習が進行中です。
・先進国とされる国で最も早く教室での対面授業に復帰したの日本、ということになるようです。
・このことは、新型コロナ感染防疫の差や教職員への負担の問題の次元とは異なる視座により、オンライン学習の実施が困難な日本の公立学校の現状を問い直す必要性を示唆していないでしょうか。
・それは、より広く、デジタル化の遅れが日本経済の生産性の低さの原因とされることと関連付けて、学校教育のデジタル化を理解する必要性を示唆すとみなせます。
・ただし、米国事情の報道(B-1)だけでなく、対面化が遅れる日本の大学教育に関する報道(B-2)に見るように、オンライン授業に対する学習者の不満が高まっていることに注目すべきです。
オンラインではリアルな授業を代替できないことを示唆する報道記事として位置付けておきます。
・もちろん、このことは、いうまでもなくオンライン、デジタル化、DX(Digital Transformation)必要性を否定することではありません。
・学校教育のデジタル化と旧来のリアルな学習は、似て非なる学習様式であることを理解することから始まるという意味です。
・日経の特集記事(B-3)では、米国の現状として、デジタル化が格差の拡大を、との視点により、学歴(教育歴)の高低と社会生活全体の格差(民族間の差別構造)がリンクすることへの警鐘を読み取ることができます。
・”教育格差→経済格差→社会全体の格差の拡大”に”社会の分断”という図式を虚構にするためにこそ、学校教育のデジタル化の拡充が必要であること。掛け算の九九や四則計算、多様な文字(ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット)の学習と同レベルで、今と未来を生きるために、だれもが獲得しなければならないリテラシー」の中に、デジタル機器操作(キーボードやアプリの操作、情報の検索・活用と発進・創造)能力を位置付けなければならないこと。それ故に、ストック学校教育のデジタル化は、学校運営や成績処理の次元ではなく、授業実践の場に展開されることが、今後の公立学校の最重要課題であることを示唆する報道記事(ストックAとB)として紹介しておきます。

2.学校教育DX(Digital tranceformation)のための私的メモと報道記事の提供

◆上記表題の目的で、昨年10月以降に、学校教育デジタル化に関する思考の歩みを記録した私的メモ(ストックC)とその過程で取集した報道記事等(ストックD)を列記します。
◆さらに、日本社会全体のDXを要請する人口減少(推計値より早く進行する出生数と出生率の減少)記事と基礎データ(ストックE)に韓国と中国の報道記事(ストックFを加えました。
◆いずれも解説を記していません。興味関心に応じて、名称クリック→URLクリックにより、PDF版を開いて眺めてみてください。
◆研究分野を問わず、また教科、道徳、総合、特別活動といずれの教育活動においても、デジタル化の研究と実践への意欲と感心を高める契機として活用いただけることを願っています。

ストックC:デジタル教育に関する私的メモ
C-1◆20年10月:学校教育のデジタル化のリアルのために:UER-Labo ※
C-2◆20年11月30日 学校教育デジタル化(DX) への私見メモ
C-3◆20年12月16日  法制度を改変する視座の開示のために
C-4◆20年12月24日 学校教育DX & Diversity

ストックD:2020年10月~12月 学校教育デジタル化に関する報道・サイト記事から
D-1★★学校教育DX情報記事名一覧:日経・朝日on-line版より
D-2★1:学校デジタル化記事遡及版10月10日➡12月1日
D-3★2:学校デジタル、35人学級12月~
D-4★3:デジタル教科書の未来? 学校と教師と授業の現状は?


ストックE:最新の人口動態統計から
E-1◆21年2月23日(火)日経 出生数、最少の87万人:昨年 婚姻、70年ぶり減少率
E-2◆21年2月23日(火)日経 昨年の死亡数11年ぶり減
E-3◆21年2月23日(火)朝日 昨年の死者、11年ぶり減 人口動態統計、肺炎が減少 「コロナ対策効果」指摘も
E-4◆厚労省報道発表資料
E-5◆
人口動態統計速報(令和2年12月分)

ストックF:韓国(低出産)と中国(産児制限撤廃検討)では
F-121年2月25日韓経:韓国、225兆ウォン投じても惨事…「このままであれば13年後に最悪の状況が来る」
F-221年2月25日:韓国の合計特殊出生率0.84 全世界198か国で最下位
F-321年2月19日(金)日経夕刊  中国、産児制限の撤廃検討:深刻な少子化に対応 まず東北地方で

2021年3月10日

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