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調査研究の部屋

生きる場の今と未来を問うことから

学校の内と外の変化をみつめて

共同研究「新型コロナ危機が顕在化させた人口減少下の公立学校の脆弱性―教育事象における格差概念の再定位を視野に―」の理解と活用を願って

 本サイトは上記テーマにより、2020年度日本教育社会学会第72回大会(以下2020教社大会と略す)で行った共同発表とその準備の過程で蓄積した調査研究の記録と分析結果が示唆する新たな課題について、より多くの方の理解を得て、より広い分野で活用いただけることを願って設置しました。そのために、A「馬居発表時レジュメのPPTファイル(以下PPTと略す)改訂版と追加考察等」B「西本による発表PPTと大会事務局による公開文書」C「“調査と分析の記録”に遡って次の研究課題への視座の提起」の3種に分類し、若干の案内文とともにPDF版をストックしてダウンロード可能にしました。

1.共同研究開始の経緯から

 調査研究のスタートは、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、全国の小中高等学校が一斉に休校することになった3月末です。卒業・入学・進級という学校教育にとって最も重要な行事(特別活動)が実施されないままゴールデンウィークを迎えました。5月半ばを超えても多くの自治体で休校は続きました。私(馬居)は、静岡大学退職を機に、人口減少時代の教育課題の調査研究を目的に開設した本研究所:UER-Labo(UMAI Education Research Laboratories)を基点にした学校教育や報道関係者との調査研究ネットワークを活用して、秋田・山形、東京(渋谷、太田、三鷹、立川)、横浜、岡山、福岡、宮崎、沖縄、そして静岡の公立小中学校の教員と子どもたちと保護者の現状を語る情報を収集し、全国ネットの報道機関による情報との比較分析を進めました。その調査と分析の過程を記録したノートに付けた表題が、「全国一斉休校で見えてきた人口減少時代の公立学校の脆弱性について」でした。
  このノートを起点に、明治学院大学名誉教授の望月重信先生と琉球大学の西本宏輝先生との共同研究を開始しました。さらに、藤田由美子先生(福岡大学)、角替弘規先生(静岡県立大学)、遠藤宏美先生(宮崎大学)、春日清孝先生(明治学院大学・非)の参加を得て、2020教社大会での発表を視野におく調査研究を進めました。その過程で、休校長期化に伴って生じる教育事象に対し、「オンライン格差」と名付けて問題視する報道機関の判断(ラべリング)に疑問を抱き、共同論議の対象にしました。その前提にあったのは、全国学力・学習状況調査(以下学力調査と略す)の正答率の差を学力格差、世帯年収の差を経済格差と位置付け、両者を正の相関でリンクさせる教育格差論への疑問視(馬居)でした。
 この私の問いに、西本先生が実証データに基づくエビデンスを提供してくれました。学力調査の第1回から第12回までの小学校と中学校の正答率の都道府県別平均値のデータを用いて行った経年分析により、学力トップとされる秋田県の正答率の順位が小学校と中学校ともにトップであるの対し、調査開始時に小中ともに最下位であった沖縄県の現在は、小学校は高位になりましたが中学校は最下位のままです。この2県と全く異なるのが静岡県です。小学校下位、中学校高位という順位の組合せに大きな変化がないからです。
 ちなみに、この3県で平均世帯年収が最も高いのは静岡県、低いのは沖縄県ですが、学力トップの秋田県は静岡県ではなく沖縄県に近い年収順位下位の県です。これらの数値の意味と相互関係について問うべきことは多々ありますが、少なくとも小中学校別正答率の都道府県別順位を平均世帯年収の高低では説明できない(否定のエビデンス)ことは明らかでしょう。これが、「教育事象における格差概念の再定位を視野に」をサブテーマにした経緯です。

2.2020教社大会で発表、本サイトの開設へ

 さらに、このような調査とzoomによる研究会を重ねた結果、問題の所在を明確にするために、私の記録ノートの標題の「全国一斉休校で見えてきた」「新型コロナ危機が顕在化させた」とすることで2020教社大会での共同発表のテーマと内容を確定しました。そして、9 月5日の発表では、「1沖縄と静岡の学力」を西本先生が、「2コロナ危機と公立学校の脆弱性」と「3授業モデルの対比によるリアルとオンラインの授業の特性と代替可能性」を馬居が担当しました。
 西本先生は限られた時間(15分)を活かす資料の提示と平易な言葉の選択により、沖縄、秋田、静岡の対比と特性を明快に語られました。しかし、私の場合は、時間と方式(zoom)の制約への対応不足を自省せざるを得ない結果になりました。そのため本サイト開設にむけて、発表時PPTの大幅な加筆修正作業が必要になりました。改訂版として下記ファイルAの「A-1」におく理由です。また、その発表内容補充のために行った2種の追加考察の記録を「A-2」「A-3」としました。さらに本共同研究のアドバイザーをお願いした上智大学名誉教授の武内清先生より、発表日と翌日の二度にわたってご指摘いただいた私の発表への疑問点に対する回答文を、武内先生の許可を得て、「A-4」としてファイルAに含めました。

 ファイルA 馬居発表時のPPT改訂版と加筆修正のための追加考察等

A-1   新型コロナ危機が顕在化させた人口減少下の公立学校の脆弱性( 馬居発表PPT改訂版)

A-2 追加考察1 共同研究における私(馬居)の視座と研究発表の目的は・・・

A-3 追加考察2格差の概念の再検討、再定位のために 

A-4武内先生の質問への回答として

 発表時のPPTと改訂版であるA-1との差は二つです。
 その一つは、共同研究者の望月先生とアドバイザーの武内先生のご指摘を踏まえて、西本先生が提起した学力調査の小中学校別に比較した正答率の都道府県別順位の静岡モデル(小学校低・中学校高)の特性と評価について、オンライン学習との対比で明確にするために必要な加筆修正を、ほぼ全てのPPT本文シート(1~29)を対象に行ったことです。その二つは、発表様式と時間の制約でカットした中学校の教科書中心によるリアルな授業の分析を「追加考察3:シート38~44」として加えたことです。
 当初、静岡モデル解明作業の最重要課題は、学力調査では検証困難な、小学校の学級担任と子どもたちによる、学級づくりを基礎にした授業で培われる資質能力形成過程の構造の解明(図示化)でした。ところが、中学校の教科専門の教員の教授力と生徒の学習力を高める授業を支える構造に、小学校の授業づくりの図示化で獲得した知見が組み込まれていることを見出しました。その意味で、リアルな小学校授業の構造分析(シート11~18)と対比しながら、中学校の授業構造との連続性を読み取る作業を試みてください。オンラインでは、小中を問わず、公立小中学校の先生方が蓄積された授業の価値の再現は困難であることが理解(証明)されるでしょう。
 なお、一つ目の加筆修正において、望月先生のご指摘を受けて、改訂版のシート1~7の加筆内容を考察する過程で作成したのがA-2です。また学会発表ではリアルとオンラインの対比が中心になるため、西本先生のアドバイスで、格差の概念の再定位についての論点を整理して追加考察とするために作成したのがA-3です。そして武内先生の質問への回答である「A-4」は、西本先生の発表との関連も含めて、本発表全体に対する今後の課題を示していただいことへの感謝の思いとともに、この位置におかせていただきました。
 その上でのことですが、西本先生が発表時に公開・活用したPPT(B-1)と大会事務局による発表要旨集録掲載のために作成した文書(B-2)と発表申請時提出の「発表題目と要旨」(B-3)をファイルBとして整理しました。この3種は、ファイルAに整理した馬居の改訂版PPTや追加考察と異なり、2020教社大会で発表した研究業績であることを認証する大会事務局による公開文書です。いずれも、共同研究リーダーとしてまとめられた西本先生の承認を得て掲載しました。

 ファイルB 西本発表時のPPTと大会事務局による公開文書

B-1西本による発表PPT:1.沖縄と静岡の学力

B-2日本教育社会学会第72回大会発表要旨集録2020掲載文書

B-3発表テーマと要旨

3.“調査と分析の記録”に遡及、新たな研究課題の視座提起を

 ここまで、改訂と追加考察も含めて、2020教社大会で用いたPPTと文書等をPDF版7種に整理・変換し、2種のファイルに分けてストックすることにより、それぞれの本調査研究における位置を確認してきました。ここからは、逆に、発表テーマの設定と発表内容の選定の基礎データとした“調査と分析の記録”4種(C-1、C-2、C-3、C-4)に遡って、「新型コロナ危機が顕在化させた人口減少下の公立学校の脆弱性―教育事象における格差概念の再定位を視野に―」との表現に重ねられた問題群の再確認により、“新たな研究課題への視座の提起”を試みます.
 その作業の補助として、「C-1」と「C-2」をつなぐ時期に、懇意の調査会社からの求めによる私見(未公開)として著した9月入学論と人口減少社会論の構成案を「C-1」の付論に収めました。

 ファイルC “調査と分析の記録”に遡り、次の研究課題への視座を提起

C-1全国一斉休校で見えてきた人口減少時代の公立学校の脆弱性

  付論1休校長期による9月入学論、
        4月入学にリンクする義務教育の役割への無知の露呈

 付論2新型コロナウイルスが強制(視覚化)する
        人口減少社会日本の現実への対峙

C-2新型コロナ危機が顕在化させた人口減少下の公立学校の脆弱性
    ―教育事象における格差概念の再定位を視野に―

C-3 日本の公立小中学校の学級づくりを基盤にした
    リアル授業との対比によるオンライン学習の課題と可能性

C-4 授業分析図、評価クロス表

 「“調査と分析の記録”に遡り」と表題に記したように、ファイルCに収めたC-1、C-2、 C-3、 C-4は、日本の公立学校が3月末の一斉休校に始まる感染防疫と長期休校という、まさに“史上初めての経験”とされる事象を調査した時系列の記録です。しかし、未経験であることは調査者である私(馬居)自身も例外ではなく、未知の社会事象の分析に挑むことを意味しました。さらに最も困難な条件は、緊急事態宣言を挟む時期でしたので、対象への直接接近が禁止されていたことです。そのため、調査の記録は、これまで積み重ねてきた次に示す実証研究 の方法と知見とネットワークを駆使して挑む試行錯誤の軌跡が描かれたノートになりました。
 ❶知識社会学と教育社会学を基礎科学に、
 ➋学校の中では“社会科・総合的学習・生活科の授業づくり”の実践研究、
 ➌学校の外の社会では、“超少子・高齢・人口減少社会”における
  “自治体・国の行政とまちづくり・生涯学習”の診断と処方箋の提示。

 この点については、共同研究者の誰もが同じ思い(研究の方法と対象の多元化)で取り組まれたと思います。だがそれ故にこそ、4種の調査記録は事象の記録(データ)と同時に問題解決への処方を見出す新たな方法を模索する実験ノートになりました。そのスタートとなるC-1は、は、次の三種の作業の合体(視座)で求めた新たな“知(気づき)”と“識(分別)”の模索の記録です。
 ➊UER-Labo開設以前の静岡大学在職時から継続調査をお願いしてきた
  小中学校の先生方や保護者の皆さん、あるいは友人の教育情報誌編集者、
  教育・福祉行政担当者、まちづくりのリーダーへの電話での聞き取りと
  資料収集(メール添付、郵送・宅配)による一次データの蓄積。

 ➋全国紙デジタルサイトを中心に報道記事を選別、視点と評価の特性で分類整序。
 ➌一次データと分類整序された報道記事との比較分析による問題(群)の析出。
 この作業過程で最初に気付いたのは、一斉休校という未経験の事態に戸惑ったのは、教員よりも保護(主に母親)の職場関係の方たちのようでした。他方、聞き取りができた小学校の先生方からは、首相の言葉を知った翌日から休校開始の前日までの数日と休校開始後に行ったことを取材できました。
 例えば、学級担任は、休校開始前の数日間に、①各教科等の学習進行度を確認し、②休校開始までの土日を挟む数日間で、春休みを含む時間軸での学習進度に応じた家庭学習との連動を組み込む学習指導計画案と学習教材を作成・印刷し、④休校前日に子どもたちと保護者対象に配布したとのことです。
 休校開始後では、継続調査校の管理職(小学校長)から、わが校では、との限定つきですが、⑤休校時も教室と校庭を開放し、⑥担任による教室内でのアドバイス(質問受けと学習見守り)可能な時間を明確にして、⑦家庭を教室にみたてた学習を可能にする教材を継続的に配布したことを伺いました。
 その一方で、休校期間が春休みを超えて新学期に及ぶことへの不安の声は例外なく聞くことができました。この面に注目すれば、報道記事が伝える予期せぬ年度末の休校要請に戸惑う学校管理職、教員、保護者、そして子どもたち、という現実もまた例外ではないことも、聞き取りを深める過程で確認できました。
 このような一次データと報道記事を重ね合わせる視座から取り出した問題群の特性を記録したノートの表題が、C-1「全国一斉休校で見えてきた人口減少時代の公立学校の脆弱性」であることは前述しました。ただし、この時点での“脆弱性”には、予期せぬ出来事(事故、災害)への対処計画(診断と処方のマニュアル)が未整備、との学校と教育行政における危機管理能力の低さを強調する意図しか含まれていませんでした。それがファイルAの「A-1馬居発表改訂版PPT」に展開したように、学校教育の優位性との関係や格差の再定位につながる論と理に深まる契機となったのが、C-2とC-3を準備する意図を込めて、C-1を受ける位置においた、付論1と付論2です。
 二つの表題に注目してください。付論1では、新型コロナがもたらしたのは、未知の危機ではなく既に存在する問題(超少子・高齢・人口減少社会の現実)の視覚化によって、その解決への覚悟を求めたにすぎない、との私見を整序しました。
 次に付論2です。執筆依頼の背景にあった、休校長期化による受験学力格差への不満と不安を梃子に9月入学への舵を、との世論(主役は銘柄大学と高い合格率を競う私立中高の関係者)の喚起は、幼児教育との連結にかかるコストの発表とともに先送りになりました。ですが、私の関心は依頼事項(9月入学の是非・適否・善し悪し)ではなく、4月入学と一体化した日本の近代公教育制度における初等(義務)教育が担った役割(機能)の内実にありました。その多重性(知・情・心・身・体の再構築)に気付かなければ、C-2(優位性と脆弱性の同質性と学力・教育・格差・論の対象化)からC-3(リアルな授業の構造分析、オンライン学習の世情評価誤謬開示、デジタル化課題開示)への視座の拡大は困難でした。
 その詳細は付論本文に譲りますが、近代国家への道を求めて彷徨する時空に生きることを強いられた民の日常の意味づけ(四季折々の事象と授業が描く新たな理と知と生業への憧憬の時空を重ねた歳時記の内面化)の再構築に果たした初等学校の社会的機能の再確認・評価の必要性を指摘しておきます。同時に、再評価の価値を付与された事象に対し、今と未来の問題群への対峙とリンクした継承の有意性の是非と可否の判断を求めることが、C-2での多元的な考察とC-3・C-4での授業づくりの構造の可視化を試みた目的であることも記しておきます。
 その意味で、ファイルC にストックした6種の記録から、ファイルAの改訂版PPTでは語れなかった“事象と論点”、“診断と処方”を見出していただけることを期待して、“調査と分析の記録”の案内を終え、“新たな研究課題の視座を提起”に移行します。とはいっても、これまでの記述から、ファイルÅファイルCに収めた拙稿等において、それぞれの論点に応じて示された新たな調査研究のための課題は理解いただけると思います。そのため、サイトの末尾として、本サイト作成の前提にある“二つの問い”を提起しておきます。

4.私自身(の作品)への問い

 その一つは、調査と研究の方法についての“私自身(の作品)への問い”です。
 先に、ファイルCに収めたC-1のデータ収集方法については、6種にわけて説明しました。C-2の場合はこの6種の延長で対応できましたが、C-3のリアルな授業の構造分析とオンライン学習との対比の作業では悩みました。体面状況での調査が困難だけでなく、リアル授業は休校で、オンライン学習は機器不在により、調査可能な対象自体が存在していなかったからです。
 それにもかかわらず、報道記事やニュース番組ではオンライン格差の言葉が、リアルな授業での学習をオンラインで代替可能との文脈で報道されていました。オンラインでの学習の方がリアルな学校の授業よりも優位、との論評が、経済専門の全国紙の著名なコラムに掲載されるようになりました。
 このコラムを読んだ時点で、問題はリアルとオンラインの対比を格差の概念で論ずること自体の可否にあると判断し、過去のリアルな授業の調査データ、映像と写真、指導案と評価の分析、学習指導要領の変遷に関係する“拙稿”を調査の対象に位置づけました。そして通常の実証調査と異なる以上、“数値化困難なデータ”を重視する視座から、私自身の“思考と心情”、“判断と行動”の“様式(型)”に書き込まれたデータ(“教員との共同の授業づくり”、“校務への参与”、“教員養成の実践”、“異文化との対比”によって培った“思考、映像、経験知の蓄積”とそれらに付着する“社会的文脈”)の“対象化”による“自己省察”(知識社会学的思考)を試みました。
 このような研究方法の位置づけ(科学的妥当性・反証可能性)は、M.ヴェーバーの“理念型Idealtypus”K.マンハイムの“相関主義Relationismus”、P.L.バーガーの“現実の社会的構成Social construction of Reality”によりますが、その概要はファイルAのA-4「武内先生の質問への回答」に記述しましたので確認ください(詳細は下記ファイルDのD-15参照)。さらに、C-3のリアル授業の構造とC-1、C-2の深化に関係する作品も含めて、上記自己省察の対象となる拙稿から選んでファイルDに収めました。参照ください。
 その上で、今後の新たな調査研究への問いとして、ファイルA~Cにストックした調査と考察の記録やファイルDの拙稿で用いられる“問い”“概念操作の型”を整序し、“数値化困難な授業づくりの構造”を構成する要素の“認知、容認、実践の度合”“授業者”に問う“質問文の素材”としての活用可能性を検討課題にします。さらに、調査結果の分析で必要になる授業過程の構造の学校現場での“実践の様式 と頻度”、“選択基準と社会的文脈”、“評価の自己認識”、“子ども理解の方法と領域”、“認知と非認知の差異”と“相互の関係の認知の有無と形態”などの“分析の視座”への活用の検討も提案したいテーマです。
 なお、このような踏査と探査の対象候補として、拙稿から15点選んでPDF版をファイルDに掲示しましたので活用ください。それぞれの出典と簡単な執筆経緯については、ファイルD末尾の◆15種の拙稿への案内◆を参照ください。
 ファイルD 分析の方法と考察の道具(概念)を求めて踏査(探査)した拙稿から
D-1人口減少による地域と社会の変化と学校教育の課題と可能性

D-2教科からみる高校教育改革の課題

D-3新学習指導要領が描く授業者の情景

D-4なぜ静岡は小学校が低く、中学校が高いか:
   学力調査の及ぼした影響に関する研究(3)~沖縄・静岡の状況から~

D-5少子高齢・人口減少社会を支える子を育む
 生活科・総合的な学習の時間の課題Ⅵ  2015生活総合福岡大会発表PPT

D-6テレビドラマが描く教師像の変遷にみる学校教育の虚実

D-7今、人気を誇る「ONE PIECE」の魅力

D-8「命の大切さ」を育む教育のための三つのステップ

D-9原点から問い直す生活科の未来2-誕生期の活動で学んだこと

D-10新学力観で学校が変わる

D-11新しい子どものとらえ方・生かし方(社会学の立場から

D-12「楽しい学校」-21世紀の学校像を求めて-

D-13日本における公民教育の成立と展開―日韓社会科教育比較考(その2)―

D-14現代社会の課題と社会科授業デザイン 社会科教育連載1~12

D-15「知識社会学」再考1

◆15種の拙稿への案内◆

5.本サイト設置に込めた問い

 ここに収めた拙稿を介して探査する“問い”の二つ目は、私自身の中にある“本サイト設置に込めた問い”です。コロナによる全国一斉休校を契機に開始した私的な調査を、共同研究による2020教社大会での発表にまで広げ、本サイトによってより多くの人の理解を願ってサイト設置に進んだ私の中に生まれ続ける“問いを問う”ことです。
 ここでは次の二つの問いを提起し、その意図を記しておきます。
 1.多様、多元、可変を前提とした個人内評価の復権を
 2.公立小学校が学区制と学級担任制によって培ってきた授業づくりの検証を
 学校教育が均質均等であることへの信頼性の保障が、統計処理を行う数値として学力調査正答率を用いることの妥当性を確保する第一条件と考えます。しかし、本調査では、全国の公立小中学校における一斉休校への対処の仕方は、一様ではなく多様でした。そしてその多様性は、授業づくりの多様性と重なることで、学習指導要領による“地域の特性”の重視が誘引(正当化)したものともみなせます。さらには、家族構成、就業状況、居住地、季節感・観などの社会的差異に、生活慣習、伝統行事、歳時記などの時間軸上の差異が組み込まれた言語コードのレベルでのローカル性(学区に内在する多様・多元・可変性)が顕著になれば、学力調査の正答率は、子ども一人ひとりに応じた三者面談で使用する非常に個性的・個別的な価値を有した数値に昇華させざるをえないのでは・・・というのが上記2種の問いの“下位にある問い”(sub question)です。
 それは、C-2に明記しましたが、学区に制約された公立小学校の構成員によって培われる資質能力の内実と差異性(相関性)を検証することなく、一元的認知能力(文字表現可能領域と正答唯一が前提)に特化した問いの正答率で序列化し、それを上下の評価の基準することの危険性につながるのでは、との問いに繋がります。学習の過程で獲得される多様な要素、認知と非認知の相互連関の知見なく、一元化することの危うさを指摘せざるを得ないのでは、との問いに深まります。経済格差の強調の背後に、不平等を忌避する社会正義の判断があると信じたいですが、それ故にこそ、一元的尺度で判断することの危うさの指摘が必要では、との問いにもなります。
 それは、子どもひとり一人の資質能力を数値化可能な領域でのみ評価することの愚かさの覚知を求める問いの必要性を示唆していないでしょうか。職域と言語操作と身体操作の組み合わせから遊離した評定という評価軸の部分性に謙虚になることを、授業づくりの原点におくことを求める問いの価値を問うことから、調査の問いづくりをはじめたいことを記して、本サイトの末尾とします。

 

【予告情報:UER-Laboにおける新たなサイトの開設のために】
★本サイトでの問題提起をうけて、次の二つのサイトの新設への準備を開始します。
    〇サイト案1:学校教育のデジタル化のリアルのために
    〇サイト案2:女性の就労と家族の教育力の再定義と再定位のために
★この二つの新サイト構想の概要のPDF版を次に掲示します。クリックしてみてください。
 ◆新たなサイト開設のために◆
   

2020年10月19日

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